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その手で触れて確かめて

第5章 小さな恋の物語(O × O)



そんなもどかしい時間をもて余していた夏休み明けのホームルーム。



文化祭の出し物についての話し合いが持たれていて、

折も折、テストが終わったばかり、ということもあって教室はお疲れムードが充満していた。



当然、俺としてはそんな空気の中、真剣に話し合いに参加する気力もなく、机に突っ伏していると、



不意に名前を呼ばれて意見を求められた。



そんなん、俺に聞くなよ…


「何かない?」



あまりにしつこく聞いてくるから、



演劇でもすれば?と、口走ってしまう。



「白雪姫、とかさ?」





で…



あれよあれよ、という間に、



後は誰が何をするのか、という話になっていて、


イヤでも皆、話し合いに参加し始めた。



知らない間に、とんでもない役割を押しつけられても困る、といった体で。



「准一、お前、余計なことを…」


「冗談だったんだけどなあ…」


「俺は知らないぞ?」



と、他人事のように一人ごちる俺を突き放す雅紀。



「雅紀、冷たいこと言うなよ〜?」



…いや、待てよ?



これ、使えないかな?



俺は、ちら、と後ろを振り返り、いつものように六法全書を読み耽る大野智を見やった。



正攻法でいけないならと、








もう一人の、


邪な俺が耳元で囁いた。





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