その手で触れて確かめて
第10章 お2階さん。( A × N )
「カズ」はゆるりと顔をあげ、振り向いた。
初めて会った時と同じように不機嫌に顔を歪ませて。
和「…今度は何?」
おまけに、俺のことをきったねぇものでも見るように見た。
「いや…その…お詫びに飯でも奢ろうか、なんて…」
和「マジ?」
「ラーメン、とか?」
カズは腕組みをし、難しい顔をして考え込んだ。
あれ?お兄さんからラーメンが好きだ、って聞いてたけど?
和「…あのね、俺ね、今、口内炎が出来てて痛いんだわ。」
「あ、じゃあ、治ったら!治ったら行こ?」
和「……。」
いつの間にか両肩に置かれていた俺の手を「カズ」は睨み付けた。
「あっ!?ご、ごめん!!つい…」
和「…いいけど?」
思わず「カズ」の肩から手を離した。
和「で?あん時何食べてたの?」
中庭のベンチに座り、「カズ」はゲーム機に目を落とす。
「ギョーザなんだけど、これがデカイのなんの…」
和「旨いの?それ?」
尚もゲーム機に目を落としたまま、抑揚のない調子で聞いてきた。
「俺は好きだけど…」
和「ふーん……」
「カズ」は顔をあげると、
膝の上に肘を置き、頬杖をついた。
和「…それがいい。」
「へ?」
「俺、そのギョーザを食ってみたい。」
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