その手で触れて確かめて
第10章 お2階さん。( A × N )
「そっちは?アンタの友だちかい?」
「あ、俺は…」
和「そう。友だち。」
え…?
「ほー、珍しいね?友だち連れてくるなんて?」
ご主人はにこにこ笑いながら、目で「カズ」の隣に座るよう促す。
友だち…
思わずにやけてしまい、
頬っぺたをバシバシ叩く。
「いっつも一人でここに座ってラーメン食ってるから友だちいねぇのか、って心配してたんだよ?」
和「えっ?おじさん、心配してくれてたの?怖い顔してんのに優しいとこあんだね?」
「おめえなあ…どうしていつもそう一言余計なんだって!?」
と、笑いながらお冷やを俺たちの前に置くと、
ご主人はラーメンを作り始めた。
和「この店のラーメンはね、俺が初めてこの土地に来た時に一番最初に口した味なんだよ。」
「へー…」
そう言って「カズ」は、
屈託なく笑った。
「ほらよ!当店自慢の中華そば。」
和「自慢て…メニュー、これしかないじゃん?」
「カズ」はけらけら笑った。
そして、目の前に置いてあった酢に手を伸ばすと、
どんぶりの中に回し入れた。
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