その手で触れて確かめて
第10章 お2階さん。( A × N )
「カズ」は、小さくいただきます、と胸の前で手を合わせると、
うまそうにラーメンを食べ始めた。
和「うん!!おじさん、アンタ天才だわ!!」
「お前、目上にアンタは、ないだろ?」
それでも天才、と言われて悪い気はしなかったんだろう、
二人で顔を見合せ声を立てて笑った。
和「どうしたの?食べないの?」
と、笑顔の「カズ」。
その笑顔にアホみたいに見惚れてる、俺。
和「ほら、酢、入れて食べてみ?」
と、勝手に俺のどんぶりに酢をどばどばぶっかけた。
「あ、ああ、そうだね?」
慌てて麺を掻き込む。
「う、うまい…。」
一人言のような呟きに、
「カズ」が笑顔で覗き込んできた。
和「でしょ?」
間近の笑顔にどぎまぎしながら、夢中で掻き込んだ。
和「おじさん、よかったね?常連客が増えて?」
「ばっか野郎!お前、まーた、あんなに酢をぶっこみやがって!?」
和「何、言ってんの?でなきゃ、食えたもんじゃないでしょ?」
ねー?と俺に目配せする「カズ」。
和「あれ?そう言えば、俺、アンタの名前、知らないかも?」
え?そうだっけ?
和「俺、大宮和也。カズって呼んでよ?」
「あ、相葉…雅紀です。」
和「タメでしょ?呼び捨てでいい?」
「も、もちろん!!」
いきなり縮まった距離に戸惑いを感じる反面、
俺は初恋の女の子に久しぶりに会ったような胸の高鳴りを覚えた。
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