その手で触れて確かめて
第2章 劣情と熱情と純情と (A × M )
ヤツの体に巻き付けた指が、
俺の体に回した腕が、
互いの汗で肌を滑り落ちてゆく。
中々掴めない互いの体温。
それでも確かな何かに触れていたくて手を伸ばす。
「あ…」
その、伸ばした手を握り返してくる温かさに触れた。
『力を抜け、潤。』
これ…この感じ。
初めてセックスした時に感じたことがある。
中2の夏休み、年を誤魔化してクラブに通い始めた時、
ただ、ひたすら女を取っ替え引っ替えして、
トイレに女を連れ込んでヤりまくっていた大学生がいた。
ある日、クラブの片隅で、その男が珍しく一人で酒を飲んでいた。
俺は、ソイツの目の前を素知らぬ顔で行き過ぎようとして、
薄暗がりから突然聞こえてきた声に体を強ばらせる。
「オマエ、大人ナメてねぇか?」
立ち竦んだ背後から、
噎せ返るような酒とタバコの匂いとが混ざったような、
ここにいる大人だったら当たり前のように撒き散らしている不快な匂いが近づいてきて、
乱暴に手首を掴んだ。
「オマエらガキどもに大人の怖さ教えてやるよ。」
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