その手で触れて確かめて
第2章 劣情と熱情と純情と (A × M )
えっ!?ウソ!?コイツ、俺をヤるつもり?
案の定、薄暗い廊下を通り、
男子トイレのドアを開けた。
「言っとくけど、俺、女じゃないよ?オニイサン。」
個室のドアに手がかかった瞬間、男の手を振り払う。
「…知ってるよ?」
男は、タバコを咥えたまま薄ら笑うと、
俺をトイレの個室に放り込んだ。
「オマエ、ひょっとして初めて?」
後ろ手で個室の鍵をしめ、
便器にタバコを投げ入れるとそのまま水を流し蓋を閉めた。
「だったら何?」
「ちょっと、可哀想だなあ、と思って、さ?」
「そう思うんならそこ退いて?」
男の体を押し退け、ドアに手を伸ばす。
が、行く手を阻まれ、壁に追い詰められる。
「…言ったろ?大人をナメると痛い目見る、って?」
男は、俺のアゴを持ち上げると、
アルコールにまみれた唇を押し付けてきた。
その、あまりの気持ちワルさに、
吐きそうになる。
男は、固く目を閉じ、唇を引き結んだままの俺を見て鼻でせせら笑った。
「オマエ、処女みてぇだな?」
「退けよ!!」
今度こそ、この密室から出ようと男の胸を両手で思い切り突き飛ばした。
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