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その手で触れて確かめて

第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )



潤side


智「ごめん…ね?」



体を離そうとする大野さんを引き止めるように抱きしめた。



「うん。」





あなたを手に入れたくて、



結果、あなたを追いつめてしまった…。





智「僕ね、好きな人がいるんだ。」


「知ってた。」


智「多分…忘れられない…」



涙を帯びた声にまた、



見た目通りの、細身のあなたを力一杯抱き締める…



智「ずっと忘れられない…」



まるで、自身に言い聞かせるかような呟きに、胸がしめつけられる。



「…いいよ?」


智「松本くんのこと、傷つけるかもしれない。」


「いい…よ?」



構わないよ?全然。



ズタズタにしちゃいなよ、俺のこと。



こうなるように仕向けたズルい俺を…



智「松本くん…苦しい…よ…」



大野さんは、俺の首にぶら下がるように腕を回し、顔を引き寄せた。



智「助けてよ…」



まるで、海に溺れ、藻掻き苦しむ者が、助けを求めるみたいにすがりつく。



智「このままじゃ僕、死にそうだよ…」



俺は、涙を流すあなたをそっとシーツの海に沈めた。



智「お願い…助けて…」







そうして、あなたに引き摺られるまま、









俺はあなたに溺れていった。


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