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その手で触れて確かめて

第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )



智side


村上さんは、オフィスを出る直前、取引先から電話がかかってきて、


後で合流するからということで僕と翔くんとで先にオフィスを出た。



しばらく歩くと信号に捕まって、



翔くんは少し後ろを歩いていた僕に話しかけてきた。



翔「松本くんと付き合ってんだって?」


「え?あ…うん。」


翔「アイツ、優しいだろ?」


「そう…だね?」



歯切れの悪い僕を不思議に思ったのか、翔くんは僕の隣にきて、顔を覗き込んできた。



翔「どうしたの?どっか具合でも悪い?」


「べ…別に?」



間近に迫る心配そうな顔に、反射的に顔を逸らした。



翔「なら、いいんだけど、さ。」



信号が変わって、



先に歩き出した翔くんの背中が遠ざかってゆくのを、



僕は、



やるせない気持ちで見ていた。






翔「ここの天ぷら蕎麦、絶品だから。」



翔くんは、上着を脱ぎ椅子の背もたれに引っ掛けながら笑った。



結局、言い出しっぺの村上さんからは来れなくなったと、翔くんの携帯に連絡があって、



僕は翔くんと2人きりのランチをとることになってしまった。



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