その手で触れて確かめて
第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )
潤side
「えっ!?櫻井先輩と?」
外回りから帰ってきた俺は、
大野さんと櫻井先輩が連れ立って出ていったと聞かされ焦っていた。
村「俺が2人を昼飯に誘ったんやけど、結局行けんようになってしもて…あ!!おい、松本、どこ行くんや?」
俺は、自分の荷物を放り出し外へ飛び出す。
『僕ね、好きな人がいるんだ。』
『多分…忘れられない…』
『ずっと忘れられない…』
『松本くんのこと、傷つけるかもしれない。』
『松本くん…苦しい…よ…』
『助けてよ…』
『このままじゃ僕、死にそうだよ…』
あの時、大野さんが吐き出すように囁いた言葉が頭の中を旋回する。
俺は、足止めを喰らわせた信号機の赤を唇を噛みしめながら睨み付けた。
やがて青に変わって人波が動き出す。
対岸から押し寄せる人波の中に見覚えのある顔を見つけて足を止めた。
「大野さん!!」
聞こえていないのか、歩も止めずに大野さんの姿が遠ざかってゆく。
「待って!!」
その背中を追いかけ手を掴む。
振り向いた彼の目は、
虚ろに俺を映し出していた。
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