テキストサイズ

その手で触れて確かめて

第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )



智side


あれから程無くして僕は会社を辞め、田舎に帰ってきた。



地元のカルチャーセンターで週一で絵を教えながら、コンビニでバイトをし、



時には車で2時間ぐらいのところにある観光名所へと出向き、格安で観光客に似顔絵を描いてあげたりしていた。



その日はバイトも講師の仕事も休みで、



天気も良かったことから、僕は車を出し、いつもの場所へと向かった。



いつもの場所で折り畳み式の小さな椅子を出し、


人物画を数枚選りすぐって風に飛ばされないように立て掛けた。



が、好天だったに関わらず人影はまばらで、



時間をもて余していた僕は、スケッチブックを広げ鉛筆を走らせた。



「あっ…また…」



出来上がった絵を見て僕は思わず声を上げた。



見上げた空には太陽が真上にいて、



僕は隣にいた手作りアクセサリーを商っていたおじさんに店番を頼み、コンビニへと向かった。



買い物袋を下げ店に戻ると、



店先に若い男の人がいて、


隣のおじさんと楽しそうに話していた。



お客さん?



僕は慌てて店に戻ると、


その若い男性客に声をかけた。



「すいません。お待たせしてしまって…」



僕はその男性の前に回り込み、その顔を見て思わず息を飲んだ。



え……



潤「久しぶり。」



松本くんは、青空に負けないぐらい爽やかに微笑んでみせた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ