その手で触れて確かめて
第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )
潤side
俺が降り立った駅は、
これで駅員がいるのか、と思わせるぐらいに小さな駅で、
駅前には観光タクシーが1台停まっているだけで、
唯一町中を走るローカルバスも通勤通学の時間帯しか運行していなかった。
スゲェ田舎…(汗)
俺は、観光タクシーに乗り込むと、
ドライバーお勧めの観光名所へと向かった。
車から降りしばらく歩いた。
やがて古きよき時代の面影を残した街並みが見えてきて、
近くを流れる川には観光客を乗せた船がゆっくりと通り過ぎていった。
もうしばらく歩くと、
アクセサリーの露店が見えてきて、
その隣には数枚の人物画が飾られていた。
その中に、見覚えのある顔を見つけて俺は思わず足を止めた。
これ…って?
「あの…この絵、ってあなたが描いたんですか?」
「んー?俺じゃないよ?これはサトシくんが描いたんだ。」
「サトシ?」
「ここで似顔絵描いとる若い男の子がおってなあ。」
まさか……!?
しばらく他愛もない話で店の主と話し込んでいると、
背後から足音が聞こえてきて、俺に声をかけてきた。
智「すいません。お待たせしてしまって…あっ…!?」
彼は俺の前に回り込み、顔を見て息を飲んだ。
「久しぶり。」
大野さんの手から買い物袋が滑り落ちて、
ぺしゃり、と地面に叩きつけられた。
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