その手で触れて確かめて
第2章 劣情と熱情と純情と (A × M )
ハジメテの相手が男で、
しかも、ヤられる側なのか、と思ったら、
涙が止まらなかった。
でも、
不意に、呼吸が楽になって、驚いて目を開けてみると、
複雑そうな表情をした男が俺の顔を覗き込んでいた。
な、何…?
男は、俺の頭をポンポンと叩くと、
背中を向けて個室のドアノブに手をかけた。
安心感から、俺の体からは力が抜け、止めどなく涙が溢れてきた。
男が手を止め、不意に振向く。
「次、ここに来たら、本当にヤるからな!?」
男はタバコを咥え、不敵に笑うと、
個室から出ていった。
家に帰ると、
夕飯も食べずに部屋に籠る俺を心配した長兄の智がドア越しに声をかけてきてくれる。
嬉しかったけど、
ショックが大きかった俺は、
泣き腫らした顔を見られたくなくて、
呼びかけに返事さえ出来なかった。
そんな状態でも空腹には勝てず、
みんなが寝静まった頃合いを見計らって、簡単に何か作って食べようと思った矢先、
ドアの外でことり、と音がして、
足早に走り去り隣室のドアの開閉音がした。
隣は次兄の翔の部屋。
ドアを開けるとそこには、歪な形のお握り2個が置かれてた。
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