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その手で触れて確かめて

第13章 雨の日に恋をして ( A × N )



「でね?その人、スッゴいキレイな人で、手なんかも女の人みたいで…」


翔「ふーん…」



翔さんは、生返事を返しながら、脱いだシャツを脱衣かごの中に放り込んだ。


あれ…?



適度に鍛え上げられた翔さんの肩。



そこに見えた赤い3本の細い筋。



翔「どうした?カズ。」


俺の視線に気づいた翔さんが振り向く。



「ん?あ、な、何でもない。」



翔さんは、慌てて視線を逸らす俺の隣に座り、顔を覗き込んできた。



不意に、俺の顎を摘まみ、熱っぽい目で見つめてきて、



唇が重ねられる。



翔「いい?」


「…うん。」



覆い被さってくる体。



俺の視線は自然と翔さんの肩先に向けられる。



翔「好きだよ、カズ…」

「翔さん…」



翔さんの唇からこぼれ落ちた甘い言葉が近づいてくる遠雷に掻き消されてゆく。





…翔さん、聞こえない。



「もう一回言って?」


翔「どうしたんだよ?」


「お願い、翔さん。」


翔「カズ、大好き…」



瞬間、大きな雷鳴が轟いて、



翔さんの言葉尻が途切れてしまう。



翔「すげえな…」



苦笑しながら口づける翔さんはどこか空々しくて、






不安ばかりが募ってゆく。



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