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その手で触れて確かめて

第13章 雨の日に恋をして ( A × N )



「わかればいいんだよ。」



と、目の前に差し出された生ハムサラダにフォークを伸ばした。



その時だった。



喫煙席に向かって足早に歩く人影に目が止まった。



「あ…あの人…。」


雅「ん?あ、大野さんだ!!大野さ…」



相葉さんが声をかけようとして、



人を探しているらしい様子を見て思い止まる。



やがて、大野さんはニコッと笑い、片手をあげながら奥へと進んでゆく。



雅「待ち合わせしてたんだ…」



同じく、大野さんの姿を目で追いかけていた相葉さんは、



残念そうに呟き、残りのカレーを掻き込んだ。



「何?あの人、狙ってたの?」



相葉さんは、せっかく口の中にねじ込んだカレーを盛大に吐き出した。



「んもぉ、汚ねぇなあ。」


雅「お、お前が変なこと言うからだろ!?」


「しっかり反応してんじゃん?」



しばらくすると、


ドリンクコーナーに足を運ぶ大野さんの後を追いかけるように、



見覚えのある顔がその後に続く。



えっ…何で……!?



その人は、



俺が見慣れた笑顔を彼に向け、優しく彼を見つめる。





脳裏を過る、その人の肩先に残された赤い筋。





『好きだよ、カズ。』





ちょっと前まで、甘く胸を締め付けていた言葉も、


今は、ただ、息苦しいだけだった。



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