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その手で触れて確かめて

第14章 インクルージョン (A × O)



翔くんはわざと大きなため息をつくと、



僕の追及を振り切るように職員室を出ていってしまった。



「ちょっと翔くん!聞いてる?」



僕は、逃げるように歩いてゆく翔くんの後を追いかけた。



翔くんは、



人気のない、体育館の倉庫へと通じる渡り廊下に差し掛かったところでようやく足を止めた。



翔「人の気も知らないで…。」


「え…?」



僕の知ってる翔くんからは想像できない低くて冷たい声。



翔「昔と全然変わってない。」



振り向いた翔くんの、今まで見たことのないような冷たい笑顔。



翔「智くん、て、いっつもそうなんだよな?」



僕に歩み寄る歩調が、あり得ないぐらいに重く見える。



翔「クラスで一番めんどくさいヤツに肩入れして、いつも俺が火消し役をやってた。」


「翔くん…?」



僕の味方してくれてたワケじゃないの?



翔くんは、後ずさる僕を壁に追い詰めて、



僕の顔の両脇に手を付いた。



翔「どうしてだか分かる?」



そんな翔くんの顔から目を逸らせないまま首を振る。



翔「…だよな?」



翔くんは、



僕の肩にことりと額を乗せ、掠れた小さな声でぽつり呟いた。







翔「…好きだったんだ。ずっと。」



…と。



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