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その手で触れて確かめて

第2章 劣情と熱情と純情と (A × M )



散らばる服を避けながらキッチンとおぼしき場所へ行き、



冷蔵庫の扉を開けた。



「…何もないね?」



玄関へ歩いてゆく俺の背中を、



ヒロシの声が追いかけてくる。



「…帰えんのか?」


「寂しいの?」


「ばーか!!んなワケねぇだろ?」


「コンビニ行ってくるね?」



不貞腐れて、こちらに背を向けるヒロシの背中を確認してから、



部屋のドアを閉めた。





「お前、もしかして良いところのお坊ちゃんか?」


「何で?」


「…タクシー代。払ってくれただろ?」


「まあ…親は社長してるけど?」


「なるほど…な?」



ヒロシはペットボトルの炭酸飲料をごくごく喉を鳴らして飲み干した。



「アンタは…学生?」


「ああ…殆ど行ってないけどな?」


「大丈夫なの?」


「…辞めるつもりだから。」



空のペットボトルをローテーブルに置くと、


ベッドに寄りかかり目を閉じた。



「…帰らなくていいのか?」


「えっ!?」



てっきり、寝たのか、と思い込んでいただけに、


不意に話しかけられて、大袈裟なぐらいに驚いてしまった。



でも、もっと驚いたのは、



その時の俺を見るヒロシの目が、








微かにオスの色を帯びていたことだった。



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