その手で触れて確かめて
第2章 劣情と熱情と純情と (A × M )
ヤな予感がして、
ヒロシから距離をとるように体を浮かせた途端、
腕を捕まれ、ヒロシの腕の中に包まれる。
驚き顔をあげると、そのまま唇を押し付けてきて、
離れようと藻掻くと余計に離すまい、と腕の力を強めてきて、
動くことすら出来ない。
どうしたらいいのか分からずに戸惑っていると、
唇の隙間を押し広げるように舌を捩じ込んできて歯列をなぞってきた。
押し戻そうと胸に置いた手も顔の脇に退かされて、
ほんの一瞬、唇が離れた隙に抗議の声を上げようとするけど、
角度を変えて押し付けられた唇に阻まれてしまう。
頭を激しく振っても離してくれなくて、
ただただ怖くて、
あの時の恐怖が頭と体を支配する。
「怖かったか?」
さっきまで、乱暴に押し付けられていた唇が、
優しい言葉をかけてきたことで、体の力が一気に抜けて、涙がどっと溢れてくる。
「こめん。どういう訳か、制御不能になっちまって…。」
眉尻を下げ、申し訳なさそうに笑う。
「な…何?何なの?一体。」
涙を拭ってくれる指先が優しすぎて、
逆に涙が止まらなくて、
それでもずっと涙を拭いてくれていて…
「アンタは…どうしてそんなに乱暴なんだよ!?どうしてもっと優しく出来ないんだよ!?どうして…っ!!」
俺の幼い恨み言なんて、何処吹く風みたいに笑うと、
頭を抱えるみたいに引き寄せて、
キスをした。
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