その手で触れて確かめて
第19章 俺のアニキ(M × S )
身支度をして外に出、黒塗りの車の後部座席でふんぞり返るように座る雅紀の隣に乗り込む。
雅「出してくれ。」
雅紀の一言で車は静かに動き出し、窓外の景色がゆっくり流れ出した。
正面を見据え黙り込んだままの雅紀をガラス越しに睨み付ける。
俺は悪くない、
仕事を言い訳に約束を守らない雅紀が悪いんだ、と、
社長という立場にありながらも朝早くに俺を迎えに来てくれた雅紀に少し後ろめたさを感じながらも、俺自身の行動を肯定した。
雅「…すまなかった。」
思わず雅紀を見る。
雅「これからはお前のことを優先するから…だから…」
相変わらず、顔だけ正面を向けたままで雅紀は言葉を続けた。
雅「だから、もう機嫌を直してくれないか?」
疲れきった横顔。
昨夜は寝れてないのだろう。
それに、ただでさえ痩せてるのにさらに窶れた気がする。
もしかして…俺のせいなのか?
俺がアンタを振り回すからなのか?
だったら、俺の機嫌なんかとってないで、俺のことなんてほっときゃいいのに、って、
さっさと別れたらいいのに、って、
唇を噛みしめ疲れきった横顔を睨み付けた。
雅「別れないから…」
「え……?」
雅「俺はお前とは絶対に別れないからな?」
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