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その手で触れて確かめて

第19章 俺のアニキ(M × S )



あわよくばもう戻らないつもりだった。



些細な理由で別れる、別れないを繰り返してきた俺と雅紀。



でも、今度ばかりは本気だった。



翔に追い出されてここまで来たけど、でも、もう…



雅「どこがいい?」


「は?」


雅「だから、海外旅行に行きたい、って言ってただろ?」


「もう、いいって?」


雅「特に行きたいところがないなら、俺が決めてもいいか?」



俺の話聞いてないのかよ?



「何言ってんの?年末年始は仕事だからダメだ、って…」


雅「海外出張なんだ。」


「え……?」


雅「だから一緒に行こう、潤。」


「冗談…!?仕事で行くんだろ?俺なんかが付いて行っていいわけないだろ?」


雅「…いいんだ。」



俺の手に重ねられる雅紀の手。



雅「今度、シンガポールに出すレストランの競合店の視察に行くんだ。だから…」



その手がぎゅっと手を握りしめてきた。



雅「一緒に行くぞ、潤。」


「でも…。」


雅「まだ、何かあるのか?」


「結局、公私混同じゃない?」


雅「言っただろ?仕事だ、って?」


「…分かったよ。雅紀がそう言うんならそういうことにしといてやるよ?」


雅「お前な…」



俺は雅紀に握られた時よりもさらに強く、雅紀の手を握り返してやった。



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