その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
俺と翔が家のドアを開け、入ってきた時、
塾から帰ってきた潤が、まさに階段を上がっていこうか、というところだった。
翔を抱きかかえるようにして家に入ってきた俺を見た潤は、
あからさまに嫌そうな顔をした。
「…大袈裟なヤツ。」
ぼそりと毒づくと、潤はそのまま一気に階段を駆け上がっていった。
そんな潤の姿を物凄い顔つきで睨み付けていた俺の横顔を、翔が黙って見つめていたことに気づいて翔の顔を見てみると、
翔はもう、泣いていなかった。
「良かった…泣き止んでる。」
思わず呟き、笑顔で翔の頭を撫でた。
すると、見る間に翔の顔が赤くなっていくのが分かって、
熱でも出たのかと心配になって、手を額に当てて、もう片方の手を自分の額にピタリとつけた。
「あれ?熱はないみたいだけどなんで顔が赤いんだろう?」
そう言いながら覗き込むと翔はますます顔を赤らめて俯いてしまった。
…面白いな、コイツ。
翔は俺の手を振り切るように然り気無く顔を逸らし、
階段を駆け上がる。
「夕食にはちゃんと降りてこいよ?」
その声に一度は足を止めたものの、
振り返ることなく自分の部屋へと駆け込んだ。
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