その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
意識して俺と目を合わさないようにして、
翔は、匙を口に含み、一気に飲み込んだ。
そして、やはり目を逸らしたまま、俺の手の中から器を奪い取るように手に取ると、
「一人で食べられるから。」
と、言って、
俺に背を向け黙々と口の中にお粥を掻き込んた。
ふふっ。旨そうに食べてる。
嬉しくて、
俺は、その様子を頬杖を付きにこにこ笑いながら黙って見ていた。
食べ終わり、器を俺に手渡しながら小さな声で「ご馳走さま」と言うと、
翔は俺に背を向け横になった。
「お代わり持ってくるよ。」
翔の頭をくしゃくしゃと撫でたあと、
返事も聞かずに翔の部屋を後にした。
久しぶりに俺も食べようかな?
トレイに、お粥の入った小さな鍋、それに器と匙をそれぞれ2つづつ乗せ、
再び翔の部屋を訪れた。
「俺も食べていい?」
こちらに背を向けていた翔が、驚いたように振り返った。
俺は、お粥を器によそうと、その1つを翔に手渡した。
そうして、
2人で、ベッドに腰かけ、器を顔に近付けてふうふうと息を吹きかけながら、
2人で、熱い熱いと言いながらお粥を頬張った。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える