その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
口一杯に広がる甘い香りは、気分を落ち着かせてくれるだけでなく、
どこか、懐かしい味がした。
それもそのはず、
このミルク粥、俺が小さい時、熱を出して寝込んだりした時によく俺に作ってもらっていたから。
ばあさんが亡くなってからは、俺がもっぱら潤に作ってやるだけで、
食べるのは、本当に久しぶりだった。
「俺が作ったんだ、このミルク粥。」
翔が顔を上げて俺を見る。
「小さい時、死んだお祖母ちゃんが熱出した時によく作ってくれたんだ。」
思わず、熱っ!と言いながら顔をしかめるけど、
実は、めちゃめちゃ嬉しかった。
「翔のお陰で久し振りに食べられたよ。」
…そう、懐かしい味を、翔と2人で味わえたことが、
すごく嬉しかったんだ…。
気分が満たされるとともに
お腹も程よく満たされてきた俺は、口の中にお粥を含んだまま、
まだ半分位残ったお粥の入った器を翔の目の前に差し出した。
「お前にやるよ。」
俺の分の器を翔に手渡すと、ベッドの上でごろり、と仰向けになった。
「腹一杯で眠くなっちゃった。」
ベッドで大きな欠伸をすると、
俺はすぐさま心地よい眠りの中に落ちていった。
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