その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
寝ていた、って言っても、
翔にシーツをかけてもらった記憶がある、ってことは、相当眠りが浅かった、ってことなんだろう。
うっすらと目を開けてみると、
頬杖を付き、こちらを見ている翔の顔が見えた。
お粥、全部食っちまったかな?
俺の顔ガン見してる、ってことはお代わりの催促かな?
でも、眠いから今はムリ…かな?
そんな、呑気なことを考えながら、
今度こそ、深い眠りの中に落ちていった。
その眠りの中で見た夢の中で、誰かが泣いていることに気付き、辺りを見回す。
蹲って、しゃくりあげる小さな男の子の姿が見えた。
『お母さん、ごめんね?』
ごめんね、って、何度も繰り返しながら。
でも、夢の中の、その小さな男の子は、だんだん現実味を帯びてきて、
次第に、目の前で突っ伏し、嗚咽する影と重なる。
えっ…?もしかして、こいつ…
こいつは…
「お母さん…ごめん…なさ…い。」
翔だった。
翔、俺の方こそゴメン。
あんな痛い思いさせておいて、
こんなことしか出来なくて…。
泣きじゃくる翔の髪にそっと触れた。
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