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その手で触れて確かめて

第4章  戸惑う唇(O × S)



俺の手は、初めは髪の毛をただグシャグシャにしている動きでしかなかったけど、



翔の上下する体の動きに合わせて次第に優しく撫でるような動きに自然と変わっていく。



徐に、涙でぐしゃぐしゃになった翔が顔を上げ、こちらを見た。



シーツから半分顔を覗かせていた俺と目が合って、


驚いて涙を乱暴に拭い、翔が半身を起こす。



「あんまり泣くと目玉溶けてなくなっちまうぞ?」


悪戯っぽく笑うと、やんわりと体を起こして、翔の背中に両腕を回して抱き寄せた。



「泣きたくなったらいつでも俺んとこ来い。一緒にいてやるから。」



すると、まるで返事をするみたいに、


すん、と鼻を啜った。



どうして、母親に謝っていたのかは知らないけど、



甘えるみたいに、俺の胸の中に顔を埋めてきた翔を力一杯抱きしめた。



「分かったな?」



念を押すように、ぐちゃぐちゃな顔を覗き込むと、



こくり、と小さく頷く。





確かに、


この時の俺たちは『お兄ちゃん』と『泣き虫な弟』だった。



今でもそれは、変わらないつもりだ。



でも、



成長するにつれ、俺たちが互いに抱く感情も、


少しずつだけど変わっていった。



特に、


あの出来事を境にして、



確実に、俺たちは…








変わっていったんだ。

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