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その手で触れて確かめて

第4章  戸惑う唇(O × S)



今から遡ること数ヵ月前、翔の友達が亡くなった。


自宅ベランダから足を滑らせ、頭部を強打。






即死だった。



彼のことは、一度、翔が自宅に連れてきた時に、挨拶程度に言葉を交わしたくらいだったが、



世間を斜めから見ているような切れ長の目が印象的な眼光鋭い少年で、



明るく、人懐っこい翔とは対照的だった。



どうあっても翔とは結びつかない、どこか、人を寄せ付けない印象があって、


どうやって翔の心を掴んだのか、



俺は、彼にとても興味があった。



ある日、翔がその少年と家の前で話しているところに出くわした。



どうやら、家に上がる、上がらないでちょっと揉めたらしいが、



二人、顔を見合わせて笑ったりして、とても和やかな空気を醸し出していた。


、入りにくい、雰囲気だな、とは思ったけど、


その、少年のことが気になっていた俺は、



思いきって声をかけてみた。



「こんなところで何やってんだ?二人して。」



瞬間笑い声が止む。



「お前の友達だろ?あがってもらえ、翔。」



それは本当に一瞬のことだった。



その少年の、憎悪に満ちた視線を感じたのは。




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