その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
「…何か根拠があるのか?」
黙り込んだままの翔に、俺から話を切り出す。
「……」
「お前な、根拠もないことを…」
「あるよ!!…和也、異常に自分のお兄さん嫌ってた。」
えっ?どういう意味なんだ?
頭の中に芽生えた疑問は、言葉となって翔に投げかけられる。
「逆なら分かるんだけど…」
翔は、俺の疑問には答えることなく、
必死に訴え続けた。
「多分、…それが元で揉め事になって…!」
「でも、今に始まったことじゃないんだろ?」
「でもっ…!!」
どこかで聞いたことがある。
亀梨くんは、彼のお父さんが外で生ませた子供だって。
…翔と似通った境遇の持ち主だ、って…。
だから、翔はこんなにも必死になって…
興奮する翔を宥めるように、肩に手を置いた。
「気持ちは分かるけど…」
すると、翔は俺の言葉を振り払うように、
気持ちを吐き出す。
「あいつ…笑ったんだ。」
「え…?」
あいつ…って?
「和也の柩見て…ほっとしたみたいに笑ったんだ。」
まさか…マジで…
途端、背筋を氷が物凄い勢いで滑り落ちてゆくような錯覚に囚われる。
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