その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
あの、亀梨くんの事故死から数ヵ月後の年明け。
その亀梨くんの兄が逮捕された。
しかも、亀梨くんの事故死とはあまり関係ないような容疑で、
自宅近くに部屋を借りて大麻草を栽培していた、というものだった。
その一方で、事故死とされていた亀梨くんの死も、
秘密を知ってしまった亀梨くんの口を封じるための、
事故死に見せかけた、彼の兄による殺人だったことも分かった。
よほど嬉しかったのか、興奮気味で俺のところにやってきた翔は、兄さん、ありがとう、と何度も繰り返した。
本当のところ、
嬉しそうに笑う翔を見て、少しだけ良心が痛んだ。
なぜなら、
亀梨くんのことに関しては、俺が岡田に頼み込む前からもう既に警察が動いていて、
彼の事故死の件も、
いくつか疑わしい点があったということで、司法解剖もなされていた。
その結果、ある事実が判明した上、
岡田からは、
「お前がどうしても、って言うからここまで喋っちまったけど…」
と、苦笑いを浮かべながら、本当は、捜査内容なんてのは外に漏らしたらダメなもんなんだよ、と言われてしまった。
ならば、と翔には再捜査には持ち込めたけど、何も出てこなかった、と嘘を伝えることにした。
まさか、あんなに泣かれると思ってなかったから、
少し後ろめたかったけど…。
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