
おさななじみ。
第1章 はじまり。
先の事件(由樹の中ではちょっとした事件)も過ぎ、テストも終え、いそいそと帰宅の支度を整えているところだった。
「(本当だったら今日は映画観に行ってたんだよねえ)」
ありもしない用事があることになってしまった由樹は、空いた半日をどう過ごしたものかと溜め息をついた。
「由樹」
「…孝ちゃん」
ざわざわとした喧騒からクリアに聴こえるその声を間違えるはずもなく、由樹は振り返りながらその声の持ち主の名前を呼んだ。
「一緒に帰るくらいいいでしょ?」
なんで、と言おうとした由樹より先に孝基はニッコリと笑っていとも簡単に由樹を骨抜きにする。由樹にとっては嬉しい誤算だ。うん、と応えた由樹の手首を捕まえ、グイグイと教室の外へと抜け出していく。
「(ああ、そんな手なんて掴んじゃったら…)」
誤解されちゃうよ。振りほどくのもおかしいし、でも孝基を誤解されたくないし…葛藤しているうちにあっという間に手は解放される。嬉しいやら悲しいやら。
そしてそこからはいつもの帰り道。日に日に大きくなっていく不安と葛藤。今まで当たり前だったことを意識してしまう辛さ。由樹は自分が思っている以上に参っていた。傍にいたい。それにはこの気持ちは口にしてはいけない。あくまでも幼馴染み。男同士の友達。ソレ以上の好意は読み取られてはいけない。
ずっとずっとこのままで居られると思っていた。でもいつかは孝基にも恋人ができて、家庭を持って、嫌でも距離が空くことになる。そのときはどんな顔をすればいい?キチンとお祝い出来る?よかったね、なんて笑顔で孝基の肩を叩ける?
たった一度のいつもとは違う自分の行為のせいで、由樹の中はぐちゃぐちゃだった。
「(本当だったら今日は映画観に行ってたんだよねえ)」
ありもしない用事があることになってしまった由樹は、空いた半日をどう過ごしたものかと溜め息をついた。
「由樹」
「…孝ちゃん」
ざわざわとした喧騒からクリアに聴こえるその声を間違えるはずもなく、由樹は振り返りながらその声の持ち主の名前を呼んだ。
「一緒に帰るくらいいいでしょ?」
なんで、と言おうとした由樹より先に孝基はニッコリと笑っていとも簡単に由樹を骨抜きにする。由樹にとっては嬉しい誤算だ。うん、と応えた由樹の手首を捕まえ、グイグイと教室の外へと抜け出していく。
「(ああ、そんな手なんて掴んじゃったら…)」
誤解されちゃうよ。振りほどくのもおかしいし、でも孝基を誤解されたくないし…葛藤しているうちにあっという間に手は解放される。嬉しいやら悲しいやら。
そしてそこからはいつもの帰り道。日に日に大きくなっていく不安と葛藤。今まで当たり前だったことを意識してしまう辛さ。由樹は自分が思っている以上に参っていた。傍にいたい。それにはこの気持ちは口にしてはいけない。あくまでも幼馴染み。男同士の友達。ソレ以上の好意は読み取られてはいけない。
ずっとずっとこのままで居られると思っていた。でもいつかは孝基にも恋人ができて、家庭を持って、嫌でも距離が空くことになる。そのときはどんな顔をすればいい?キチンとお祝い出来る?よかったね、なんて笑顔で孝基の肩を叩ける?
たった一度のいつもとは違う自分の行為のせいで、由樹の中はぐちゃぐちゃだった。
