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第29章 まほろばの家 byアロエリーナ・のさまじょ・millie

「翔に頭撫でられると、安心する」


和也は目を閉じて、気持ち良さそうに微笑んだ。



「もう遅いから、眠ろうか。和也‥」


そうは言っても、窓の外から煩い風音。



「今夜は、風が強いね?家‥壊れないかな」


和也は、不安そうに窓を見つめた。



「ここ山だし、小屋だからな‥でも大丈夫。

俺が起きて、見張ってるから‥寝よう?」



「ん~‥眠れない。そうだ、昔話してよ。

翔がお医者さんだった頃の話、聞きたい」



和也は、無垢な子供のように

瞳をキラキラ輝かせて、俺を見つめてる。



くそぅ‥そんな可愛いおねだりされたら、

絶対断れないじゃないか‥



「そうだなぁ‥じゃあ、長期入院してた

コレやる婆ちゃんの話しようか」



「‥プッ!なにそれ、何でもくれるの?」



「もぅ‥ネタバレしちゃったじゃん‥」




願わくば、この笑顔を百年先も見ていたい。


叶わずとも、一秒でも多く、永らえたい。


二人きりで、残された時間を生きよう。


俺の想いは、胸に秘めたまま‥‥




「じゃあ今度は、今はご隠居生活してる

元腕利き医師の、昔話をしてよ」

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