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第53章 いーりじん by ちろ

「も,無理…動けないっ…」

翔くんの熱を受け止めながら何度も揺さぶられた躰は,窓から入る光がオレンジ色に変わる頃にはもう重怠くシーツに沈んでいた。

「ごめん,大丈夫か?風呂行けそう?」

本当は歩くくらいできるけど,甘えていたくて,差し出されたその手に絡み付いて

「連れてって…?」

躰を寄せると

「掴まってろよ?」

ふわりと躰が持ち上げられた。

首に腕を絡めて頬にキスをすると,視線が絡んで,ふふっと微笑い合う。



「夕飯,ホテルのルームサービスでいい?」

俺を足の間に座らせて,髪を乾かしてくれながら翔くんが聞いてくる。

「いいけど…」

ハッキリとしない俺の返事を聞いて

「どっか行きたい?店探そうか」

年末に2人で穴が開くんじゃないかというくらい見たパンフレットを,ドライヤー片手に翔くんが取り出すから

「ここで食べよう?いつもなら外に行きたがるから珍しかっただけ」

と訂正すれば,ぎゅっと後ろから抱き締められて

「少しでも2人きりの時間欲しいから…」

耳元で甘く囁かれて,また躰がピクンと跳ねる。

誰の目もなく,くっつきあって過ごせるこの時間がずっと続けばいいのに…と思いながら,後ろの翔くんに凭れて,唇が触れ合うだけの柔らかいキスを受け止めた。

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