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第56章 Several nights by のさまじょ

彼は、カウンターの方へ歩いて行く。


「別に買わなくていいから、コーヒー飲んでいきなよ」


「え?いいの?」


「いいよ。俺、ここの稼ぎで生活してるわけじゃないから…」


くすっと笑うと、カウンター奥のカーテンを開けて入っていった。


暫く待っていると、マグカップを二つ持って彼は現れた。


「どうぞ」


エキゾチックな微笑みを浮かべて、イスに座った。


俺もその横のイスに腰掛けた。


マグカップを受け取ると、少し顔の前に掲げてから一口含んだ。


「あ…旨い…」


実はこの島に来てから、旨いコーヒーなんて飲んでなかった。


ローストをしたばかりのような芳香が、堪らなかった。




俺は、それから毎日その土産物屋へ通った。


美味しいコーヒーが飲みたいから。


…いや、それは言い訳だったのかもしれない…


彼に、会いたかった。


なぜかはわからない。


無性に会いたかった。


いつも店の奥で、なにかの洋書を原書で読んでる。


たまにノートパソコンで何か打ち込んだりもしている。


それが本職なのだと、彼は笑った。

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