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第58章 楽園 by つぎこ







翔くんの幻は、俺を抱え上げると、そのままベッドルームへ…。

南国風の天蓋を見上げて、クスリと笑う。


「…こんなところにひとりで泊まって、どうするつもりだったの?」

揶揄うように、真上から俺の顔を覗き込んできた。

この幻は、意地悪、だ。

そんなの、俺の勝手じゃねーか。


「…俺がいないの、そんなに寂しかった?」

「…ちが…っ。」

幻が、意地悪に囁く。そして反論しかけた唇は、その意地悪な唇に塞がれ、ひとしきり貪られてから、ようやく解放された。


「…俺は寂しかったよ?」

翔くんの手のひらが、俺の両頬を、ふわりと包み込んだ。優しい瞳で、愛おしむように俺を見つめてくる。


ずるいよ、翔くん。

寂しいに決まってんじゃん…。じゃなきゃ、こんなところにまで、追っかけてなんかこないよ。


「…俺は翔くんのために、来てあげたんだからね。」

「…ふふ。嬉しいよ。」

素直になれない俺に、目を細める翔くん。

翔くんはいつも、そのままの俺を受け止めてくれる。いつも、そうしてくれる。

だから今夜は…。


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