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第8章 夢か現か by奏

-ふと、

誰かの気配を感じて、
目が覚めた。




…誰?




動けずにいると、

頬にかかった髪を、
そっと耳へ掻き上げる、指先。

こんなことするの、
一人しかいないじゃない。

その手を掴んで、
目を開けると、




「…大野、さん…!」




咄嗟に、
思いっ切り抱き寄せた。

温かい。
夢じゃない。

「苦しいよ、ニノ」

ずっと聞きたかった、
優しい声も。




大野さんが、ここにいるよ。




「またどっか行っちゃうから、
やだ…っ」

しがみ付いたまま、首を振ると、
大野さんは微笑って、




「もう買い物済んだから、
何処にも行かないよ?」

「え?」




…どゆこと?




大野さんをぽかんと見つめると、

「やっぱり覚えてないー」

苦笑しつつ、
真相を教えてくれた。




酔った俺が、
『ハンバーグ食べたい』
って大騒ぎしたから、

大野さんが
買いに行ってくれてたこと。




当の俺は、
その後寝ちゃって、

目が覚めるとすっかり忘れてて、

朧げな記憶を頼りに、
勝手に脳内ストーリーを創って、

…泣いてたこと。

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