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「ふぅっ…うっ…しょ、く…」


「………」


俺の腕の中で…智は枯れる事の無い涙を流し続けていた。


回りの皆も…ほとんどの同級生が泣いている。


祭壇に飾られた写真の翔くんは…素敵な笑顔だった。


あの日…智と桜祭の約束の場所へ向かう途中…翔くんは信号無視の車に跳ねられて…この世を去った。
横断歩道の向こう側で笑顔で手を振っていた智の…目の前で。


お通夜の間…ずっと智は俺の隣で声を震わせて泣いていた。


「おいらのせいだ。おいらが…誘ったから」


別れ際、智は呟く様にそう言った。


「智のせいじゃない。あれは事故なんだ」


「おいらのせいだ」


何度こんなやり取りをしたのか分からない。


でもいつからか…智はその事を一切口にしなくなった。
もう踏ん切りがついたのかとも思ったけれど。
でも…分かる。
智の心の中には…まだ翔くんが居る。





あの日からいつの間にか５年が経っていて。
俺は大学を出て就職して。
智は…高校を出た後パン屋に就職した。


でも俺達の間では…翔くんの話も…桜祭りの話も口にする事はもう無くなっていたんだ。


今日、この日までは。