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第77章 サクライロ by きぃな

「智サン、着いたよ?」

車から降り立ったそこは桜の名所

「だあれもいないね」

そりゃそうだ
桜の開花宣言が出たのは一昨日
そのあと冷え込んで、桜も咲くのをためらっている
確認出来るのは数輪の花

ひゅうっと一陣の風が吹き抜けた

「寒っ」
「だから言ったじゃん、まだ早いよって」

俺は智サンを引き寄せて、その身体を抱き締めた

「だって、早く見たかったんだもん…」

なんでも、インスピレーションが湧いたらしい智サン

次の作品に『桜』をイメージしたものを作るんだって

そうなると居ても立ってもいられない智サンは、早くイメージを固めたくて桜が見たいと仰った

「…やっぱ潤の言うこと聞いとけば良かったな…ね?」

腕の中から俺を見上げる
その顔は反則だよ、智サン…

「智サ…ン……」

ゆっくりと顔を近づけ……

「あー、さむ寒っ、潤っ早く帰ろっ」

するりと俺の腕を抜け出して、車へと智サンは小走りしていった

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