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第78章 ひとひらの記憶 by アロエリーナ


……

生い茂る緑の葉で、雄々しく見える桜木。


眩しすぎる日射し…

うだるような暑さ…


「おーちゃん早く来いよ、オッサンか!」


そんなのお構いなしで野山を駆け回る、
白いランニングシャツの元気な少年。


「小学生だし~。もー…あいばちゃんは
セミ取り始めると、夢中なんだから」


「セミじゃねーよ、抜けガラ集めてんの」


何の役に立つんだよ~と呆れながらも、
つい笑ってしまう。


あの一本桜の周りにも、蝉はよく居たから
秘密の裏山でもよく遊んだ。



あいばちゃんは、クラスで一番の親友。


空気感というか、波長が合うみたいで。

バカやって遊ぶ時間が、面白かった。



「おーちゃん、どこ行くの?」


「…ちょっと、探しもの。じゃあね!」


「うん、また遊ぼうね!」


無邪気な笑顔が、太陽みたいに輝いてた。


友達との楽しかった、キラキラの記憶。


…ねぇ桜、潤が居るのはもっと後だよ。


ひとひら引っ張って、フッと吹いた。

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