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第85章 君にいちばん近い椅子 by チャコ
「翔、やっぱりここにいたんだ…」
後ろから抱きしめると
涙が僕の腕を濡らした
手にはまた一枚の紙きれがあった
3月、翔の配属は変わらなかった
「雅紀…俺…なんでここに居るのかな…?」
「…社長がここに居て欲しいと思ってるんだよ」
「なんで?俺、何かした?本社で第一線で働いて…10年だよ?いつか社長の姿を見られる場所で働くために…すごい人の傍で働けるようになるために…ずっと頑張ってたのに…」
大粒の涙が流れた
うちの社長は社員の前に
一度も立ったことがない
そんな顔も知らない社長のことを
どうしてそんな風に想えるの?
なんの肩書もない僕じゃダメなの…?
「…社長もきっとわかってるよ…」
「わかるわけない…社長は…俺達なんかに興味ないもん…」
そんなことないよ…
口を挟む前に口調が強くなった
「なのになんで?興味がないのに、なんで俺の役割を奪うの?」
翔の役割はここにあるのに…
「翔はここが嫌い?」
「…ぇ…ぁ、や…ううん…そうじゃなくて…」
だから、誤魔化すの下手過ぎるでしょ?