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第92章 Sparkler~線香花火~ by millie

智くんの手には和紙で縛られたこよりの束があった。

「花火大会?」

「そ、花火大会!大きなのには行けないけどさ、二人で花火も良くない?」

「でも、花火、どこにあるの?」

「これ。僕が作った線香花火。こないだね、番組で作ってきたの!って……あーーーーー!」

突然叫ぶ智くんに驚いた。

「どうしたの?」

「いや、浴衣に着替えといた方が良かったなって…思って…」

「ふふ、はははっ!ごめん!なんかもう…」

突然笑い出した俺に怪訝そうな顔の智くん。
でもなんか、拗ねてるのがあほくさくて。
こうやって考えてくれる智くんの気持ちに心に渦巻いてたモヤモヤが消えた。

「拗ねててゴメン。花火大会行けないけど…リオ、頑張るから…見てて?」

「拗ねる翔ちゃんはそれはそれで可愛いけどね?でも折角貰った仕事は全力でやってほしいんだ」

「もう、大丈夫」

「じゃ、勝負ね翔ちゃん!落ちたら負けだよ?負けた方は…」

その先を耳許で囁く。

うっ…絶対負けられない!

って思ったのに不器用な俺には過酷な戦いだった…。

「ふふふ、翔ちゃん、残念だったね?今日は僕ね?」

智くんが手をさしのべる。

その手は出会った頃と変わらない。
少し前を歩く背中も…。
俺を導くもの。
あの時からずっとこの人に夢中だ。
初めてすべてを捧げたいと思った人。

多分、あれが初恋だったんだ…。

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