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第94章 雨夜に咲く花、恋花火 by namako
「何、出かけるの? 雨は?」
寝ぼけ眼を擦りながら、翔君が窓の外に目を向ける。
「雨、まだ降ってるよ?」
「いいから、ちょっと付き合えよ」
俺は翔君の手を引き、そのまま引き摺る様に玄関へと向かった。
二つ並んだ下駄を履き、俺達は部屋を出た。
一つの傘を2人でさし、向かった先は…
「…公園?」
「そ、公園。…さ、行こ?」
「えっ、あ、うん…」
翔君の手を引き、なるべく泥濘に嵌らないよう、石敷きの上を歩く。
「どこ行くの?」
「いいから。…お、あった」
目の前には東屋。
傘を畳み、乾いたベンチに翔君を座らせた。
「ちょっと待ってて?」
手にした袋からバケツを取り出し、ペットボトルの水を注いだ。
小さめの空き缶に蝋燭を立て、ライターで火を点ける。
「ほい、翔君の分」
「えっ、これ…」
「ん? あぁ、去年の残りだから湿気ってないといいけど…」
束の中から一本抜き取り火を点けた。
「ダメか?」
諦めかけた瞬間、パチパチっと音を立てながら、火花を散らし始めた。
「綺麗…」
「だね? ほら、翔君も」
「うん」
翔君の顔に笑が浮かんだ。