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第98章 遠恋花 by のさまじょ


また一つ、花火が夜空に開いた。
3本目の缶を開けようと、コンビニ袋に手を伸ばすと何かが手に触れた。
驚いて手を引こうとして、反対の肘を階段の手すりにぶつけてしまった。

「痛っ…」

くすくす笑う声が聴こえた。

「え…?」

振り返ると、そこには君が座っていた。

「久しぶり」

なにも変わらない姿。
その白い頬は透き通るようで。

「…どう、したの…?」

思わず呟いた声は、震えていた。

「会いに、来たんだよ?」

そう言って微笑む。

「俺に…?」

また花火が花開いた。
赤い、綺麗な光が君の頬を照らした。
顔にできる影と赤い光のコントラストが、とても綺麗だった。

「そうだよ…だめだった?」
「だめじゃないよ…むしろ…」
「むしろ…?」
「嬉しい…」

許して…くれるの?
自分勝手だった俺を…
なにも見えていなかった俺を…

「最初から…なにも怒ってないよ…」
「嘘だ…じゃあなんで俺の前から消えたの?」

白い手が伸びてきて、俺の頬を包んだ。

「だって…わかってたから…」
「え?なにを…?」

訊いた瞬間、俺と君の唇は重なった。

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