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第98章 遠恋花 by のさまじょ


「あ…」

思わず身体を離してしまった。
まさか君からこんなこと…

「嫌だった…?」
「え…?嫌じゃない…」

君はにっこり微笑むと、俺に手を伸ばしてきた。

「ずっと…こうしたかったんだ…」

ゆっくりと君の腕が俺の身体を包んだ。

「本当は触れたかったんだ…」
「え…?」
「言って…?あの時、言ってくれなかった言葉…」

あの時、言えなかった言葉
ずっと後悔してた
なんで、あの一言が言えなかったんだと

「いいの…?言ってしまって…」
「うん…聞きたい…」

震える手を君の背中にまわす。
手のひらで触れたら、痺れるような熱が身体に起きた。
耐えなければ、と思う。
だけど…君のうなじから漂う芳香が俺を惑わす。

「言って…お願い…」

君の懇願にも似た声に、やっと喉を言葉が通って行く。

「好きだ…」

ぎゅっと抱きしめる腕に力が入った。
一層君の香りが俺の身体に染み込む。

「好きだ…ずっと、出会った時から君が…」
「嬉しい…嬉しいよ…」

その時、大輪の花火がいくつも夜空に花開いた。
隙間なく夜空に溢れるように、それは続いた。

君の白い顔にいくつもの光の花が咲く。
耐え切れなくなった俺は、君の微笑む唇にくちづけた。

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