あなたに精力うばわれちゃいます!
第2章 捲土重来
「失礼します」
保健室のドアを開けたのは朝霧聖だった。
その事実に祈織は、カーテンを開けた時に気づいた。
「あ…」
「……堺」
祈織は目を合わせた瞬間、聖に背を向け、洗面台で手を洗い始めた。
その異様な光景に何かを察知した聖は眉間にシワを寄せる。
「…朝霧くん、どこか調子でも悪いのかな?」
「いや、俺は寝不足で寝かせてもらうつもりで来た」
「またサボりかい?」
「うるせー。お前には関係ないだろ」
相変わらずの口の悪さに、祈織は腹わたでぐつぐつと怒りがこみ上げていた。
少しやけくそになって、こんな言葉を漏らした。
「…ここで寝るのはいいけど、可愛い女の子もここで一休みしてるから、邪魔しないであげなよ〜?」
「する訳ないだろ。お前ならしそうな事」
「はあぁ〜……全く時間を無駄にしちゃったよ。そろそろ俺は教室に戻るね」
「勝手に戻っとけ」
祈織は聞こえない振りをして廊下に出た。
そして、出た瞬間に口角が自分でも驚くくらいに吊り上がる。
気持ち悪い程に。
「……水上さん、君の……奪っちゃうね…♪」
左手で小さなコントローラーを持って、始終小さく笑い声を漏らした。