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あなたに精力うばわれちゃいます!

第1章 風馬牛


「こ……こわかったぁぁぁあ………」

少し離れたところで私は膝を折って崩れた。
助かった、と思えば思うほど脱力して足に力が入らなくなる。
それよりも、誰の力も借りずに一人でこの状況を打破できたことが何よりも嬉しかった。

「多輝姉さん…ありがとう……」

私がさっきから呟いている「多輝姉さん」という人物は、文字通り私より三つ年上の姉である。
私が中学校三年生までは、さっきみたいな状況になった時、必ず多輝姉さんが助けてくれたのだ。
だが、その頼れる多輝姉さんはもうここにはいない。
もともと旅好きな姉だったため、「世界のいろんなところを見たい!」という素敵な夢を持って海外へと旅立ったのだ。
そして私は、高校一年春から実家を出て一人暮らしを始めた。
案の定、最初の一年はきつかった。

「(入学初日から釣竿を持ったオジサマに追いかけ回されるわ…露出狂と遭遇するわでもうどれだけ不幸体質なんだろう私は…)」

不幸体質、と言ってもそう安易なものではない。
私の場合、少し特殊なのだ。

昔、多輝姉さんが言っていたこと…。

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