あなたに精力うばわれちゃいます!
第1章 風馬牛
『あのね、縁には不思議な力が宿っているの』
『ふしぎな、ちから?』
『そうだよ。へーんな男が近寄ってくるんだよ!』
『おねえちゃん…からかってる?』
_______そう、そんな変な力があるせいで、私はあんな目に遭ってしまうのだ。
最初は冗談だと思っていたものの、女性としての羞恥やませた感情が芽生え始めると同時に、『へーんな男』が近づき始めたのだ。
「…はぁ。こんな力、いらないよ…」
そんな人達から好かれるより、好きな人から好かれていた方がよっぽどマシだ。
「邪魔なんだが」
深く考えすぎて、何も気づいていなかった。
そんな感情の起伏も全くない声音で私はハッと顔を上げた。
この声は、間違いない…。
「あ、あ……朝霧くん…!」
「だから、そこにいられると邪魔なんだが…」
「ご、ごごごめんなさい!」
言われて初めて、私はその場から立ち上がり、塞いでいた道を開ける。
この仏頂面の男の子は朝霧聖(あさぎりさとし)。
いつでも冷静で落ち着いており、まるで絵に描いたようなクールキャラである。
そのため、いつも不機嫌そうな面持ちが伺える。