あなたに精力うばわれちゃいます!
第3章 満身創痍
「アンタはいつでも冷静で、慎重ね…。あたしはそういう所にも惚れたのかもしれない」
言いながら夜宵姉は身体を起こして俺を解放する。
再び、地べたに座り込む夜宵姉。
俺は対照的にその場を立って手を差しのべる。
「…ずるい。聖はずるいよ」
俺の手を取って立ち上がったかと思うと、そのままの流れで姉は俺に短くも暖かいキスをした。
今回は本当に一瞬だった。
「そんな聖だからこそ、ちゃんと相手を選んで欲しい。あたしがさっき言ったことと矛盾しちゃうけど…やっぱりあたしの中でも『弟』として、心配な面があるのかな。……正直同じ血が流れていることが悔しい」
「夜宵姉……」
「それとね、もう一つお願いがあるの。……これがきっと、最後のお願い」
「最後?」
深刻そうに俯いて、考え込む。
しかし、言う決心がついたのか顔を上げ、まっすぐと俺を見つめた。
姉は眉を八の字にさせた。
何か重大なことを言おうとしている時の顔だ。
俺の身体にも緊張が走って、思わず拳を握った。
「この家から逃げて。遠いところへ、逃げて」