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あなたに精力うばわれちゃいます!

第4章 一意奮闘

そう叫んだのを聞いた瞬間に、重だるかった身体が急にふわっと宙に浮いた。
不慣れなその感覚に、間髪入れずに私の身体は暴れだした。

「やああぁぁっ!!?」

「暴れるなって言ったそばから!言うこと聞けっ!」

厳しく朝霧くんが言い放つ。
そうだよね、危険だもんね…いや、でもこれは反射条件からなったもので…急に抱き抱えられたら皆そうなっちゃうよ!

「行くぞ。ひとっ飛びだ」

「嘘っ!?この状況で!?」

周りはどこからどう見ても青緑色。
シンプルな壁紙のようなデザインにも見えるが、これは確実に堺くんから編み出されたオーラだ。
窓も、ドアも、段差もないこの部屋でひとっ飛びなんて、一体何を考えているのだろうか。

「無駄だね。朝霧くん、君の力じゃ俺には勝てないよ」

「……」

元々光のない朝霧くんの瞳から、さらに光が抜けていく。
それはまるで死んだ魚のような目にも見えてしまい、私は代わりに堺くんを思いっきり睨みつけた。
すると、冷徹な目のまま朝霧くんは淡々と言い放った。

「勘違いするな。『今』の力じゃ『まだ』、お前に勝てないだけだ」

「ほう…」

違う。死んだ魚のような目ではなかった。
これは、『憤り』だ。
それは綺麗な透き通った翠色の瞳が、紅く紅く変化しているところから心情が見られる。
そして、背中から溢れんばかりの殺気のオーラが異常に怖い。

「あ、さぎりくん?」

「…お前如きに手渡さない」

まだお姫様抱っこされた状態で、私の肩を持つ朝霧くんの手に力が入った。

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