秘密のおとぎ夜話
第11章 【赤ずきん】猟師の仕事
「おばあちゃん…」
「おばさん」
従兄は赤ずきんの父方の従兄、祖母は母方で、血のつながりのない親戚だった。ちいさな村の中では、そんな親戚関係など珍しくもなかったが。
「赤ずきん、まずはごめんなさいね。おまえにはまだ早いかと思って黙っていたんだけど。
オオカミのこと、知っちゃったんでしょう?」
祖母は全裸に毛布を巻きつけた格好でベッドの上に起き上がって言った。
「う、うん。おばあちゃんとお友達だったのね。
私にも、遊びを教えてくれたの。
怖くなかったよ。」
「遊びだって?はあ……あのオオカミは……悪い子ねぇ…」
祖母はため息をついて、赤ずきんを改めて見つめた。
「オオカミとおまえがしたのは、子孫を作るための行為よ。
もともとオオカミにはメスが生まれなくてね、ヒトの女性と交わって子どもを作るの。
わかる?」
「…え。じゃあ、私…赤ちゃんができちゃうの?」
気持ちいい遊びの後に、そんなことが待ってるなんて。
村の決まりで結婚できる年ではあるが、まだ恋人もいない赤ずきんは、子どもを産むことなど考えたことがなかった。
(――森の奥へ追いやられて、オオカミが減ってしまったって言ってたのは…そういうことなのね。)
オオカミの話は嘘ではなかったが、重大な事実が抜け落ちた話だった。
「あの子はあたしで満足してくれてると思ってたんだけど…
赤ずきんを見ちゃったら、我慢できなかったんだね…」
「え、でも、おばあちゃんは赤ちゃん、できたの?
オオカミさんといつも遊んでるって…」
「そこで、猟師さんのもうひとつの仕事の出番よ。
ほら、あなたにもたっぷり『手ほどき』してあげたでしょう?」
祖母が従兄のほうを見てにっこりとほほ笑んだ。