テキストサイズ

声の魔法

第5章 ライブハウス

この熱気、やっぱ苦手。帰りたい私とは裏腹に、喜恵と彼氏の正樹君は、仲良さそうに笑顔で何か話している。


正樹君はここのオーナーの息子さん。いわゆるお坊っちゃんてとこ。そのわりには派手でなく、なかなか誠実そうないい男。
羨ましい・・・私も声の彼と・・・見たことないけどね(笑)

会場の熱にまけそうになり・・少し風に当たりたい。そんな思いで私は足を進めた。

裏口かな? こっちかな?あれ? 迷ってます?あたりを見回していると、一人のスタッフさんらしき男性と目が合った。


この人知ってる。誰?てか、この顔知ってる。どこで?


「???」


「もしかして迷子さんですか?」


この声、似てる?ちょっと違う?あれ?ドキドキする。


『すみません、ちょっと外に出たくって。』

オシイ、もう一度声が聞きたい。


『あの・・・どこかでお会いしました?』


「時々会ってるよ。」


・・・ちょっと似てる。


「電車でね。」と言って笑った。


『へっ?』


思い出せ、思い出せ。電車の中。


無理っ。声が気になって思い出せない。


『えっと・・・ごめんなさい。』


「いいよ。また、そのうちにね。」そう言って微笑んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ