
妄想世界
第1章 目隠しプレイ
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窓から入る太陽の光が心地好い昼下がり。
昼食も食べ終え、恋人の帰りを待っていた。
「…そろそろか」
時計を確認すればそう呟き、飲んでいたココアを机に置きソファに持たれ掛かった。
季節は冬、昨日まで雪が降っていた。
少し肌寒く感じ、膝に掛けてあるタオルケットに手を突っ込み、自分の無趣味さを噛み締めていた。
少ししてチャイムが鳴ればガチャ、と鍵と扉の開く音が聞こえ、バタバタと慌だたしくリビングに向かう足音がした。
「ただいま、裕斗」
「…おかえりなさい、涼さん」
返事を返せば嬉しそうに笑って、隣に座り抱き付いてくる。
「はー、寒かった」
「冬っすもんね」
「裕斗、暖めて?」
「嫌です」
えー、と、子供っぽく口を尖らせて拗ねる。
つい、社会人だろ、と思う。
涼さんはアクセサリー屋の社長さん。
俺も一度、行かせてもらったことがある。気さくな店員達、綺麗なインテリア、そして、輝くアクセサリー。
因みに、俺と涼さんが恋人だと店員達は知っている。いや、涼さんがばらした。
しかし、抵抗が無く皆受け入れてくれて、良かった。
「…裕斗?どうかしたか?」
「えっ、?」
ぼーっ、としながら思い出していると、涼さんが不思議そうに顔を覗き込んでいた。
「あ、いや、何でもないっすよ」
「そうか?」
「そうっす、ッ…ひゃっ!?」
冷たい何かが触れ、思わず変な声が出てしまった。
恥ずかしさに顔を赤らめながら、それが相手の手だと理解した。
「涼さん!」
「あははっ、ごめんって」
そう言いながら手を休ませる気配は無く、冷たい感覚が腹をなぞる様に上に登っていく。
「、あ…涼さ、止め…っ」
くすぐったさと、恥ずかしさと。
小さく肩を震わせながら堪え、声を抑える。
「もう一度聞かせてよ、さっきの可愛い声」
「ぜ、たい…嫌っす、」
眼鏡のレンズ越しに相手を睨み付ける。
少しでも気を抜いたら、声が出そうで、でも出したら相手を喜ばせるだけで。
「睨む顔も可愛い」
そう言う俺の恋人は、きっと末期だ。
