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第1章 閉じた心

学校にいる時だけ我慢すればいい。

家に帰ったら
どうせ1人だ。

とても気楽。


去年、母が亡くなり
まだ若い父は心が壊れた。

家に居ない事が多く
食事は自分で作る。
と、言っても私は料理なんて出来ない。

だから毎日、納豆ごはんや、ふりかけ。

父はたびたび知らない女性を連れてくる。
わりと毎回違う女性。

「モテるんだろうな」

そのくらいしか思っていなかった。
父と会っても会話はない。
元々無口な人。

口を開けたと思ったら
「もう寝ろ。」

私が「どこか行くの?」
と聞いても無言のまま家を出て行く。



「男って本当、訳わかんない・・・
男なんて・・・大嫌い。」
ガキ臭い。
付き合ってらんない。
だから、イジメる男子も父も私はほっといた。


そんな風に考えれる自分が
大人になったような気がする。

むしろそう思わないと
やっていけない。

そんな事を思いながら
半年が立ち
中学生になって初めての夏休みがきた。


毎年、東京から
従兄弟が遊びに来る。
それが楽しみ。

1つ下の小学6年生の秋ちゃん。
1つ上で中学2年生の優くん。

その間に挟まる
中学1年生の私、【みゆ】。

毎年夏休みは3人で出かける。
負けず嫌いな3人は
いつも競争しあって
私がいつも負ける。

それでも楽しいから、悔しいけど
負けるのも心地いい。


秋ちゃんと優くんは
近くに住む、おばあちゃんの家に泊まっている。
2週間だけの3人の夏休み。

2週間立てば東京に帰ってしまう。

電話が鳴った。
おばあちゃんからだった。
「みゆ?もう秋ちゃんと優くん着てるよ。」


私は急いで向かおうとしたが
ふと、「ビックリさせてやろう」
なんて考えた。

周りの友達が薄くお化粧をしていて、私も興味が出ていた時期。

「中学デビューだぜ」
と少し自慢したいが為に
100円ショップまで自転車を走らせる。化粧品を買い家の戻り、つい最近初めて買ったファッション雑誌を見よう見まねで塗っていく。

特に1つ下の秋ちゃんに自慢したかった。

鏡を見てビックリした。
みゆ「・・・化物・・・。」

初めての化粧は下限がわからない。
何回も顔を洗いなおした。
本当に少しだけ色をつける程度に自然に。
自分の顔を作るのに夢中で
電話は午前中に来たのに
すでに夕方だった。













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